プロ野球開幕戦の売上いくら?元SBホークス幹部小林至が解説
▼開幕戦のド派手なセレモニーはいくらかかってる?
▼プレミアム!?入場者特典グッズの裏側
いよいよ今年もプロ野球が開幕しました。
開幕戦というのは、球団にとって一年で最も華やかで最も緊張感のある特別な一日です。
球場にはフロントはもちろん、取締役、親会社やグループ会社の社長クラス、
主要取引先、自治体の首長(市長・副市長など)まで、
普段は現場に来ない“偉い人”が勢ぞろいします。
マスコミも大勢やってきて、この日ばかりはテレビの制作や記者の方までスーツ姿。
私たちフロントもスポンサー対応でスーパーボックス(スイートルーム)を回る都合、
正装が基本です。
ソフトバンクの開幕戦には、孫さんも必ずと言っていいほど来場されます。
24時間、分刻みのスケジュールの中で、プライベートジェットを使って駆けつけてくれます。試合が終わればそのままアメリカへ、ということもありました。
前日はロンドンにいても「開幕の日」は予定を何とかこじ開けて駆けつける。
それほど特別な日なんです。
当日は裏側の選手サロンに、監督、コーチ、選手、スタッフが集まり、
そこでオーナーからの激励の言葉、いわゆる「訓示」をいただきます。
基本的には、ホームチームの練習が終わったタイミングで行います。
たとえば18時プレーボールなら、ホームの練習は16時前くらいまで、
続いてビジターの練習が1時間。それに合わせてオーナーにも動いていただくのが
原則ですが、到着が遅れる場合は、ビジター練習の後、セカンドアップを経て
シートノックに入る直前、手短に訓示をいただくこともあります。
⚾️開幕戦は「縁起物」で必勝祈願
また「縁起物」も大切にします。選手サロンには鯛の塩焼き(お頭付き)、
赤飯、紅白饅頭を置く。ホームの開幕では、地元の神社から神主さんにお越しいただき、
お祓いを受けます。フロントスタッフもその日のお祓いは必ず受けて、
選手が大きな怪我をせず、チームが優勝できますようにと祈ります。
ソフトバンクの場合は箱崎宮です。平安時代創建とされ、日本三大八幡の一つ。
厄除け、勝ち運の神として知られる神社から来ていただきます。
ビジターの際も鯛の頭付きや紅白饅頭、赤飯は用意しますが、
オーナーの訓示やお祓いの来訪は、やはりホーム開幕が中心になります。
食の場面にも、開幕ならではの“温度”があります。差し入れがとにかく多い日ですが、
選手は試合前に食べるものが決まっていて、炭水化物中心のルーティンを崩さない。
カレーライスが好きな選手も多いけれど、消化の面では少し重い。
結果的に、豪華な差し入れを一番食べているのは、
我々フロントスタッフだったりします。玄関口や選手サロンには胡蝶蘭が何百本も届いて、
並び方からして普段とはまるきり違う。球場全体が「正月」の空気を帯びるんです。
新聞記者が背広で来るくらいの、年に一度の非日常です。

福岡ソフトバンクホークスフロント時代の小林至
⚾️開幕戦のセレモニーにかける費用
試合前のセレモニーは、費用のかけ方からして別格です。
普段の約3倍、時には5倍に膨らむこともあって、
開幕戦の演出費はだいたい1,000万円が目安。平時は200〜300万円規模の演出でも、
プレミア感を演出するためにしっかり投資します。
スポンサーとタイアップして「presented by 〜」は付けつつも、
この日に限ってはスポンサーの拠出額に縛られず、球団として“やり切る”。
その代わり、収入も多いのが開幕戦です。チケットはソールドアウト。
チケット、物販、飲食を合わせた当日の売上は2億円はくだらず、場合によってはそれ以上、クライマックスシリーズに匹敵する水準になります。
演出は、地元や自衛隊・警察の吹奏楽団の生演奏、センター後方の大扉を開けての入場、
スモークと荘厳な音楽で、まさに“お祭り”そのものです。
藤本監督を神輿で担いで入場した年もあったし、新庄監督がゴンドラで上から降りてきたり、スーパーカーで乗り付けたりと、開幕は「伝説」が生まれる舞台でもあるんです。
⚾️始球式はどうやって決めている?
始球式の人選には、地域密着と“旬”のバランス感覚が問われます。
決めるのは興行部ですが、市長にお願いすることもあれば、
その年に最も存在感のあるアイドル、俳優、アスリートにお声がけすることもある。
私のホークス時代でいえば、2014年は福岡発のスターとして全国区に駆け上がっていた
橋本環奈さんにお願いしました。2018年は金メダルを獲った直後の小平奈緒さんでしたね。2025年の開幕は上戸彩さんでした。
上戸さんは2005年にも最初の年に始球式を務めています。
地域と“今”をどう結びつけるか。
開幕の象徴を誰に託すかは、興行としてのメッセージでもあります。
⚾️開幕戦限定グッズ
入場者特典、いわゆるギブアウェイも、開幕は特別です。
チケット価格も普段より少し高めに設定される分、日本人の“初物好き”に応える形で、
この日限定の配布物を用意します。MLBではキャップかTシャツが定番で、
手軽で安く、大量生産に向いている。
一方で日本は多品種・少量の工夫が効いていて、記念タオルやピンバッジ、トートバッグ、
スクラッチカード(当たりで選手のサイン入りグッズがもらえる)など、
コレクター心をくすぐるアイテムを毎年のように更新します。
レプリカユニフォームはシーズン中の配布が多く、開幕での配布はあまりありません。
公式戦のホームゲームは72試合。そのすべてで、何らかのイベントと配布アイテムを
組み込んでいくのが基本設計ですが、開幕はその“特別版”という位置づけです。
こうして見ると、やはり、開幕戦は単なる「一試合」ではありません。
球団、選手、スポンサー、メディア、地域社会が、一年の始まりを同じ場所で共有し、
ここからの物語を立ち上げる日です。だからこそ、コストは攻めてかけるし、
回収は一日での売上だけではなく、露出、満足度、関係の深まりという“複利”で見ていく。
派手な演出が残すのは記憶だけではなく、次に球場へ足を運びたくなる理由でもあるのです。
皆さんの「開幕戦の思い出」も、ぜひ聞かせてください。
球場の空気は毎年違う顔を見せます。
今年のプロ野球開幕戦も、また新しい物語の始まりになるでしょう。
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